【長編小説】KEYSTROKE ─ 第10話「再戦」

part10 長編小説

       

START

1時間のグループディスカッションを取り組みはじめて、1か月経過した日の夜。

慎一がホワイトボードにマーカーを走らせながら口を開いた。

慎一
「じゃあ、流れを再確認する。」

1:侵入
2:敵AIの核確定
3:敵AIへ文章送信
4:制圧


1:侵入

慎一
「まず、VOICELINKがシステムに侵入。そして、瞬が別ルートから同システムへ侵入。」


「OK、ログを解析してシステムを特定し、別ルートの確保、侵入を10秒でやる」


2:敵AIの核確定

慎一
「次に、結花。瞬が侵入したシステムから敵AIの動きを追え」

結花
「すでに予測アルゴリズムは組み込んである。
 前回の模擬戦では、敵AI特定後に、防御(敵AIの分散)を取られた。
 その経験を生かし、最初の特定の段階で、敵AIの核を見つけ、確定させます。」

3:敵AIへ文章送信

慎一
「そこからは終打の仕事だ。敵AIの”核”が特定できた瞬間に、タイピングAIに指示を与えてくれ。
 ここからの作戦は、琴葉に説明してもらう。」

琴葉
「まず、敵AIに文章を送信。つまり、clearが受け取ることになる。
 そして、送る内容は、【AIは人間の代わりにはならない。】」

慎一
「なぜ、そういった文章なんだ?」

琴葉
「ここまでのclearの行動理由、考え方を観察すると分かります。
 clearは、“人間にとってAIは共生ではなく代替”と考えています。
 ですので、その考え方を真正面から否定する言葉をぶつけると、必ず動揺します」

4:制圧

琴葉
「そして、clearの感情が爆発し、無意識に声にしてしまいます。“ふざけるな”と。
 その”声”は、敵AIにとっては”指示”として認識されてしまいます。
 つまり・・・」

慎一
「なるほど、確かに”ふざけるな”という指示は、
敵AIのアルゴリズムでは”STOP”として登録されている可能性があるな。」

琴葉
「その一瞬の”停止状態”の間に、終打くんが敵AIへハッキングコードを送信。
 敵AIは、制圧完了。勝利という流れです。」

慎一はうなずき、ホワイトボードのペンを置いた。

慎一
「以上で、作戦の確認は終了だ。明日、模擬戦の再戦を行うから今日はゆっくり寝てくれ。」

5人はそれぞれの役割を再認識し、部屋を後にした。

そして翌日、研究室の空間が、再び緊張に包まれた。

慎一
「今回の模擬戦では、“敵AIの特定”までを実戦と同様に進め、
 そこから“終打の文章によって敵AIが動揺する”という流れを再現する。

 本番では、clearがその文章に動揺し、“ふざけるな”と声に出す。
 その瞬間、敵AIは誤って“停止命令”として認識し、“10秒間の停止状態”になると想定。」

慎一
「そのため、模擬戦ではこの“10秒間の停止状態”を老人に演出してもらう。
 あとは終打がその10秒の間に、敵AIにハッキングコードを打ち込み、制圧できるか。
 それを確かめる。皆、集中力を最大限に発揮してくれ。」

KEYSTROKEメンバーは、それぞれの“覚悟”を終わらせ、待機した。

老人の声がスピーカーから届く。

老人
「それでは、模擬戦――再戦、開始だ。」

――模擬戦再戦START――

KEYSTROKEの5人&タイピングAI  VS  老人&音声認識AI「実験機108」

敵陣営

老人
「実験機108、侵入開始」

敵AIが仮想システムへの侵入・・・1秒後成功。


KEYSTROKE陣営

その侵入ログを、裂波瞬が即座に解析。別ルートでの侵入・・・10秒後成功。

続いて、氷堂結花が敵AIの座標特定、“核”の確定を開始・・・25秒後成功。

斉堂終打がタイピングAIに指示

終打
「実験機108に文章を送ってくれ。内容は【”AIは人間の代わりにはならない。”】」


・・・2秒後成功。

敵陣営

文章を受け取った老人が、10秒間待機。

KEYSTROKE陣営

この待機時間で、終打がタイピングAIに指示

終打
「実験機108へ制圧コードを送信してくれ。」・・・5秒後、制圧成功。


――――――――――――模擬戦終了―――――――――――ー

勝者:KEYSTROKEの5人&タイピングAI

この勝利は、グループディスカッションを通じて培われた“意思の共有”と“分担の精密化”
によるものであり、彼らの実戦能力が確かな成果として証明された瞬間だった。

模擬戦の勝利が確定した瞬間、研究室内に静かな歓喜が広がった。

老人がKEYSTROKEの部屋へ戻り、伝えた。

「この力なら、clearを抑えられる可能性が十分にある。よく頑張ってくれた。」

その言葉に、5人の目が光る。
敗北を知り、そこから這い上がったKEYSTROKEに、“恐れ”はなかった。

そして、決戦の日が、近づく――。

    

※この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・出来事はすべて架空であり、実在のものとは関係ありません。
一部の文章や画像に生成AIを使用しています。