START

藤川遥、23歳。
遥「今日は入社式だから明るく行こう!」
この時の私は新しい環境に身を置くことに、とてもポジティブだった。

だが、入社して3か月が経ち、状況は一変した。
慣れない業務、緊張の連続、人間関係、家賃、光熱費、保険、食費。
「お金、大丈夫かな……」
「ミスしないかな、明日の会議……」
「風邪ひいたらどうしよう……」
そんな漠然とした不安が、私の心に染み込んでいた。

仕事が休みの土曜日、彼女は近所の公園のベンチにひとり腰掛けていた。
天気予報では、午後からの降水確率は80%であり、
今は、11時57分だった。

ふと目を上げると、子どもたちが砂場で遊んでいた。
遥 「雨、降るのに……」
遥は思わずつぶやく。だけど、すぐに気づいた。
あの子たちは――
“今”しか見てない。
未来の天気なんて、誰かに言われても関係ないんだ。
びしょ濡れになって怒られても、そんなことは “今” の遊びの前では些細なことなんだ。
全身で、全力で、今という一瞬を生きている。
その姿に、遥の胸がじんわりと温かくなった。

「……私も、そうなりたい」
未来を心配して、過去の失敗に怯えて、肝心の“今”を生きることを忘れていた自分。
遥はこの瞬間から、”今”に目を向けてみようと決心した。

その日の午後、遥は家に帰り、久しぶりにお気に入りの映画を観た。
余計なことを考えず、集中して観ると、これまで以上の満足感があった。

その後、洗濯物を干しながら、思った。
「生きてるって、こういうことかも」

1年後――遥は、自分でも驚くほど明るい笑顔で毎日を楽しんでいた。
未来の心配は未来の自分に任せ、過去の失敗は笑い話に変えた。
彼女は、今この瞬間を楽しんだ。