【長編小説】KEYSTROKE ─ 第13話「clearの正体」

part13 KEYSTROKE

    

START

決戦は、KEYSTROKEの勝利で幕を閉じた。

code108の制圧が確認され、KEYSTROKEメンバーは静かな安堵に広がっていた。
そんな時に、老人が一言。

老人
「結花くん・・・今すぐ、clearの現在地を突き止めてくれ。
 ハッキングしたcode108の内部情報から割り出せるはずだ。」

結花は、驚いたように目を見開いた。

結花
「はい・・・やってみます。」

彼女はすぐに席に座り、code108のデータからclearの座標を探索した。

そして数分後・・・

結花
「居場所が分かりました。”朝夜遊園地”、地下駐車場の管理室です。」

その場所を聞いた瞬間、終打が椅子から立ち上がる。

終打
「そこは・・・昔、母と何度も通った場所だ。」

KEYSTROKEメンバーと老人は、すぐさま遊園地へ向かった。

遊園地の地下駐車場に着き、管理室の扉を開けた。

終打が一歩、足を踏み入れた。
そこにいたのは、フードを深く被った男――パソコンの前で何かを操作していた。

男が気配を感じて振り返り、ゆっくりとフードを外す。

clear
「終打・・・? 本当に、終打なのか・・・?」

その顔を見た瞬間、終打の心の中に、懐かしさ、驚き、怒り、寂しさが同時に発生した。

終打
「父さん・・・だったんだね」

clearの正体は、終打の実の父・“斉堂透夜”だった。

彼は、愛する妻を失った11年前から、独自のAI研究に没頭していた。
妻が亡くなった翌日の夜、透夜は老人に「妻をAIで復活させたい」と語った。

老人
「君が“妻をAIで復活させたい”と語ったあの夜のこと、今でも覚えているよ。
 目は、涙で濡れていて・・・けれど、その奥には、燃えるような執念があった。」

「そこから透夜くんは、VOICELINKという集団を作り、世界中の情報を抜き取り、
 AIの研究に没頭していた。
 私は本当に焦った。本気で妻を復活させようとしていることに。」

「私はその時に伝えねばならないと思った。
 “AIは人間の代わりにはなれない”と。魂は複製できない。想いは演算できない。
 だが、妻を亡くした直後に言っても、君は変わらなかっただろう。」

老人
「だから私は、時間をかけて、君に“現実”を突きつける必要があると考えた。
 言葉でなく、実力で、AIでは乗り越えられないものがあると知らせるために。

 そこから、透夜くんが作ったVOICELINKに真正面から挑む存在として、
 私はKEYSTROKEを作った。さらに、計画を諦めてもらうための最大のポイントとして、
 君の息子である終打を中心メンバーに加えた。」

透夜
「そうだったのか・・・全ては俺と終打を対面させるために・・・」

透夜は、少しの間を挟み、終打に問いかけた。

透夜
「終打、俺の計画は、”お母さんをAIで復活させること。”
 声も、記憶も、反応も・・・すべてを再現して、また一緒に暮らせるんだ!
 一緒に協力してくれるよね・・・?」

その言葉には、確かな愛情があった。だが、終打は首を横に振った。

終打
「違う。父さん、それは”お母さん”じゃない。どれだけ似てても、それは模倣の域を出ない。
 感情は真似できても、”心”はない。お母さんは、もういないんだ」

透夜の表情が凍る。

終打
「俺は、母との別れを受け入れている。
 AIは人の代わりになるんじゃなくて、人を支える存在なんだ。
 だから、”母の復活”という計画は諦めよう。」

透夜
「終打・・・終打だけは、理解してくれると思っていたのに・・・」

透夜は、今まで信じてきたものが、すべて否定されたように感じた。

――家族にも拒まれた。
――愛する者も戻らない。
――11年の執念が、誰にも届かなかった。

涙が静かに床に落ち、叫んだ。

透夜
「もう誰も助けてくれない。こんな世界、終わってしまえばいいのに・・・

 すべてが終わればいいのに・・・・・!!」

――この言葉を発した瞬間だった。

透夜が持っていたパソコンが、不気味な起動音を発した。
画面が黒く染まり、文字が浮かび上がる。

start
「音声、”すべてが終わればいいのに”を確認。Protocol Z、起動します。」

それは、透夜が密かに構築していた、歴代最高傑作の音声認識AI、「start」だった。

startは、感情を分析し、意図を読み取り、即時に実行する。
そして、透夜の言葉を”指示”として受け取った。

startが世界中のネットワークにアクセスを開始。

インフラ、防衛システム、金融機関、通信、交通・・・
世界の中枢システムに向けて、同時に1000の攻撃が放たれた。

結花が青ざめた顔で、叫んだ。

結花
「これはまずいです・・・すぐに止めないと、
 このインターネットに依存した世界が崩壊します!!」

KEYSTROKEメンバーも、言葉を失った。

透夜
「こんなつもりじゃなかった・・・」

だが、startには”つもり”など通用しない。

合理的な実行をする音声認識AIの欠陥が、この状況を作ってしまった。


▼最終話はこちら


※この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・出来事はすべて架空であり、実在のものとは関係ありません。
一部の文章や画像に生成AIを使用しています。